# 第三楽章


歩いて10分、俺の通う神命高校に着いた。

この高校を選んだ理由は何と言っても俺の家との近さだ。

朝のんびり出来るのはとても良いことだ。

「おはよう剛」

「おぅ、グッモーニン楓」

こいつの名前は森野剛。

『剛』は『つよし』ではなく『ごう』と読むから要注意だ。

初見の奴は大体間違える。

「そういえば今日、転校生が来るらしいぜ」

「マジか? 女か?」

「御名答」

おいおいマジかよ? 朝からテンション急上昇だよ。

「……美人か?」

「……ふふ」

「焦らすなよな」



「はーい全員席座れー」

さぁてキタ。転校生のお披露目ですか。こんなワクワクはSM○Pのライブ以来だ

ぜ。



「えーでは今日は私達の新しい仲間を紹介しよう」



いぇーい、待ってましたー。



そんな声が所々から飛び交っている。

さぁ、どんな子でしょうねぇ。

「紹介しよう。天宮真理さんだ。彼女はお父さんの転勤でこんな忙しい時期にこちら

に来てくれた。仲良くしろよ、お前ら。」



俺は『美』という言葉は彼女のために作られたのだと思った。

夜空よりも暗く深い艶やかな長い黒髪、美しく整った目鼻立ち、雪のように闇をも照

らし出すような輝く白い肌、羽根を生やしたら天に翔んで行きそうな程美しかった。

彼女の前では黄金ですら目を眩ますかもしれない。

しかもアレは多分Dカップ以上だ。ありがとう神様。私のお手元に天使を遣わせて頂

けるとは。今度賽銭箱に50円玉いれときます。



「天宮真理です。父親の転勤の多いのであまりお友達がいませんでした。この学校

ではたくさんお友達を作りたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。」

美しくも力強く凛とした声。一挙一動が優雅で、少し儚げなものだった。



「森野さーん……」俺は下卑た笑みを浮かべながら剛を呼んだ。

「……おう」

さすがは剛だ。俺の考えを即座に読んだ。話が早いってもんだ。

そしてクラス委員の比野が仕切り始めた。

「えーでは天宮さんに質問ある人は……」

『はい!』

俺と剛は比野の言葉を遮り太陽を掴むかのように天高くへと手を伸ばした。

「じゃぁ楓と剛。」

比野が俺らを当ててコンマ1秒経たないうちに俺らは叫んだ。

『3サイズを教えて下さい!』



よくやった、お前ら漢だよ。



そんな声がクラス中から聞こえて来た。

「天宮さん、答えたくなければ答えずにアイツらの顔面にシャイニングウィザードか

ましてもいいんだよ?」

比野は真面目野郎てアホだからこういう場面でも空気を読まずに『答えなくていい』

などという戯言を口に出すこともしばしばある。



「まぁ……仲良くなるためと考えれば、仕方ありません……」



これは……キタ。

こういうのはムードメイク、つまりは雰囲気作りのために言うのであって言う当人達

は聞けないことなど百も承知である。

だがしかしどうだ!この天宮真理という女!

『仲良くなりたいので』という理由で会ってからわずか数分の獣達に自分のトップ

シークレットナンバーを教えようと言うではないか!

これはもしや……いまや国宝とまで称されている……





天然!!







そうと分かれば放課後までに生年月日、血液型、趣味、住所、好きな食べ物、好きな

飲み物、よく行く場所、性感帯まで聞くことも可能だ。



そして天宮さんが自分の3サイズを発表した後約20分、男子達は1時間目の現代文の授

業なんてお構いなしに天宮さんを質問責めにした。



「血液型は何型ですか!?」

「ABです」

「動物は何が好きですか!?」

「ヒグマです」

「愛ってなんですか!?」

「愛の価値観というものは人によって違うと思います」

「抱いてください!」

「何をですか?」

「踏んでください!」

「喜んで」

「今日の下着の色はなんですか!?」

「黒です」

「1日で5万円稼げるアルバイトあるんですけどやりませんか!?」

「アルバイトする時間がないのでお断りさせていただきます」

「……!?」

「……

……




続く